JELAは2013年4月29日にエキュメニカル功労団体として日本エキュメニカル協会から顕彰されました。これを取り上げたジェラニュース第31号(2013年8月5日発行:P6)の記事では、パストラル・ハープがキリスト教界の教派を超えた働きをしていると書きましたが、現在では、キリスト教界のみならず、仏教や神道といった宗教を超えた用いられ方をしています。その一端を示すのが以下のキャロル・サック宣教師からの便りです。
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パストラル・ハープの演奏を通じて新たな友人がたくさん与えられます。このことに私はいつも、驚きと感謝をおぼえます。
2014年11月6日に曹洞宗法仙庵で、阿佐ヶ谷近辺に住むキリスト教、仏教、神道の信徒の皆さんから構成された杉並区宗教者懇話会の集いがあり、私はそこで演奏するという稀有な機会を頂きました。互いを知り、学び合い、尊重し合うために、信仰の違いを超えて定期的に集まっているグループです。このような、異なる宗教間の繋がりを模索する取り組みは、今日の世界において非常に重要なことだと思います。
お招きを受けた時に、ユダヤ教・キリスト教の伝統に基づく限られた楽曲しか演奏できない自分がそのような集まりにふさわしいかどうか分かりません、と申し上げました。しかし、担当者の方々がそれでいいとおっしゃり、お誘いをお受けすることにしたのです。お誘いをとても名誉にも感じました。
当日の手順がはっきりとは知らされていませんでしたが、担当者の方々はやさしく挨拶をして、会場へ案内してくださいました。驚いたことに、本堂の中ほどにある畳の部屋に通され、私のハープは美しい仏壇の真正面に設置されました。リラ・プレカリアのパストラル・ミュージックをこのような場で奏するのは初めてのことであり、非常に新鮮な経験でしたが、同時に、これが正しく神聖な行いであると、深く感じました。
奏でる曲の説明などはせず、私たちの神聖な伝統に基づく、一般には馴染みの薄いと思われる音楽をラテン語、そして日本語以外の言葉で弾き語りしました。知っているメロディや言葉に縛られない自由を聴き手に与えるためにこうするのです。私は「神の愛が、私たち皆を、お互いに対する尊厳と尊敬の気持ちをもって、一つにしてくださるように」という祈り心を持って演奏しました。
15分ほどで演奏を終えた時、その場を沈黙が支配しました。ほどなく、集いの代表者が、もう一曲演奏してくれませんかと言いました。私は「旧約聖書にある詩編23篇による歌を歌います」と答え、神棚をまっすぐ見つめながら、ダビデの言葉を歌い上げました。「主は羊飼い、わたしには何も欠けることがない……」。
第33回 杉並区宗教者懇話会 於 阿佐ヶ谷法仙庵 平成26年11月6日 |
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当日の記録が杉並区宗教者懇話会の冊子『しんもん<伸紋>』(第59号、2015.1.31発行)に掲載されています。そこには、会の代表幹事・鎌田紀彦さん(大宮八幡宮宮司)の次の言葉が引用されています。「……先ほどはルーテル教会のキャロル・サック宣教師さんに荘厳なハープの演奏をご披露していただきました。仏前での奉納演奏でしたが、その美しい音色に西洋と東洋の精神が一つに溶け合っていくような思いが致しました。まさに、宗派を超えたこの宗教者懇話会のあり方を表現されていると、深く感じ入った次第でございます。おそらく今日は、法仙庵のご本尊さまも、この宗教者懇話会の活動を祝福してくださり、あたたかく見守ってくださっているかと思います。……」
これらのことについて、キャロルさんは以下のように考えているようです。
「私たちには、聴き手に対して尊厳を実際的に提供する、つまり、私たち自らの信仰に対して忠実であると同時に、聴き手に対して、その人の魂の必要に応じた音楽の解釈の自由を与える術があるのだと、私は強く信じています。私はまた、主が私たち一人ひとりを、洗礼を受けているかどうかに関わらず、愛しておられると信じています。神の聖霊が、一人ひとりの心の中で、個人的な背景に関係なく語っておられると、私は信じているのです」。