2023/03/31

【カンボジア・ワークキャンプ2023】参加者レポート④(宮本 英さん)

JELAは2月13日から23日に3年ぶりとなるカンボジアでのワークキャンプを行いました。

引率3名を含む13名の参加者たちは、JELAが現地パートナー団体LWD(Life With Dignity)と協力して支援している2箇所のプレスクール(幼稚園)でのボランティア活動を行いました。また、カンボジア・ルーテル教会(Lutheran Church in Cambodia = LCC)にも協力してくださり、現地の青年会や礼拝に参加し、ボランティア活動を含めて、施設の子どもたちなどと交流を深めました。
JELAとLWDが支援して建てられたプレスクールのトイレを塗装する参加者たち

カンボジアの歴史と文化を知るために、キリングフィールド、拷問博物館、戦争博物館、王宮などの見学や世界遺産アンコールワット遺跡の観光も体験することができました。

また、キャンプ中に毎晩行ったディボーションでは、チャプレンを引率してくださいました日本福音ルーテル日吉教会の多田哲牧師が、参加者の皆さんと共に、その日に体験したことを聖書と照らし合わせながら、振り返りと分かち合いの時間を過ごすことができました。 これらの体験をもとに、今回の参加者10名から感想のレポートをいただいておりますので、順次ご紹介いたします。

 以下は、宮本 英さんのレポートです。

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日本に帰国後、ワークで汚れた軍手やスニーカー、記念に買ったポストカードなどを片付 けながら、カンボジアワークキャンプの思い出を振り返っていました。振り返ってみても、毎日がとても刺激的で、豊かな時そのものでした。
 
カンボジアについた日に感じたあの異国の匂い。私にとって記憶上初めての海外への渡 航でした。国に匂いが存在することに強い衝撃を受けたのを鮮明に覚えています。
 
2日目、午前中散策したセントラルマーケットで感じた人々の活気。つたない英語を駆使しながら一生懸命に買い物をしました。午後に訪れたトゥールスレン虐殺博物館とキリングフィールドでは、人間の弱さを目の当たりにしました。カンボジアの歴史、それが私と同じ人間の行いであることを信じたくありませんでしたが、現場に展示されている犠牲者の写真や音声ガイドで聞く関係者の声、それらは間違いなく私と同じ「人」でした。人がここまで残虐になりえる弱い生き物であること、時代が違えば自分もそんな人になりえたことを感じて落胆に近い感情を抱いたのを覚えています。
 
3日目と4日目に訪れたJELAの協力団体であるLWD(Life With Dignity)のオフィスと共同で支援する学校で感じた都市部と郊外の格差。オフィスで都心と郊外のインフラ設備や教育の格差が進んでいること、コロナ禍でその格差が顕著にみられることを学びました。実際郊外の学校訪問では教員の待遇が整っていないところ、建物こそできているものの都心に比べてまだまだ設備が足りていないところが見受けられました。
支援先の小学校生徒に手作りマスクを配る宮本さん(中央・帽子)

また、この日は自分の無力さを感じた日でもありました。生活や教育を必要としている子どもたちに自分がしてあげられたことは、ペンキ塗りと折り紙を折ることだけ。折り紙で鶴を折ってあげるだけで声を上げて喜ぶ子供の姿、お互いの知っている少ない英語で私と交わす会話を楽しんでくれる子供の表情に、逆に自分が救われました。
子どもたちとの交流を楽しむ宮本さん(中央・白Tシャツ)と参加者たち
 
5日目から7日目にかけて交流した青年たちから感じたエネルギーも印象的でした。カンボジアにあるルーテル教会のコミュニティを3か所訪問し、コミュニティの青年たちと交流しながらワークをしました。カンボジアの同世代の若者と一緒に礼拝し食事をとり、言葉を交わした体験で感じた気持ちは帰国してからもなお、私の心に残っています。日本より環境は整っていませんでしたが、大学で学んでいることや、自分の身の回りのことを楽しそうに教えてくれる同世代の姿は輝いて見えました。そんな姿になにか大きな可能性を感じたのを覚えています。他方で、ここでも都市と郊外の格差を感じました。彼らの教会やコミュニティセンターの設備も雨漏りがいくつもあったり、礼拝中に停電が発生したりと、インフラ設備も不十分な状態でありました。ワークの帰りに新しくできたイオンモールで夕食を取りましたが、若者たちの居た雨漏りだらけの教会と、夕食を取った大きくて新しいイオンモールが同じ国であるとは思えませんでした。 
 
8日目に訪れた実際に使用されていた戦闘機や銃器が展示された戦争博物館。動いていなくても戦車やヘリコプターの威圧感には体が強張りました。実際に使われていた戦闘機が綺麗な状態で見られることから内戦が終わってまだ日が浅いことを感じました。私の生まれるほんの少し前まで、これが動いていたと思うと悲しく、今もなおこれらと同じような戦闘機が人の命を脅かしている地域があると思うと苦しくなりました。
 
キャンプ9日目、10日目に訪れたカンボジアの観光都市シェムリアップで、文化維持と発展の両立の難しさを感じました。2日間でアンコール遺跡群やナイトマーケットを観光しましたが、同じ都心でも街の様子は8日目まで泊まったプノンペンとは違い、観光地化が進んでいたことに驚きました。マーケットで会う現地の人はプノンペンで会った人同様に皆フレンドリーで、活発な印象を受けました。しかし、売られているものは観光客向けの定番のグッツが多く、道ですれ違う人の外国人の多さ、道の綺麗さにプノンペンとのギャップを感じました。開発がみられるのはいいことだと思っていましたが、プノンペンの雑然とした街の中に感じる人々の生活感や文化が恋しくも思えました。
手形でイラストを楽しむ宮本さん(左)、現地LCCスタッフ(中央)と参加者の古屋さん(右)

街で受けた刺激はこれら以外にも山ほどありますが、毎晩行ったディボーションで受けた刺激も貴重な体験の1つでした。10日間、日々いろんな思いを抱きました。出会いや体験にうれしい思いや暖かい思いがしたこともあれば、自分の無力さ、弱さに打ちひしがれる思いがしたこともありました。ディボーションの時間はそんな気持ちを整理する大事な時となりました。賛美をして心を静め、聖書の御言葉にその日の経験や思いを重ね、その体験、思いをどう捉えるべきかのヒントを得ました。その中でも一番心に残っているのは、このワークが、愛を分かち合うためのものであるということでした。7日目のディボーションで、神の愛とは「与える愛」であり、その愛は人とのふれあいの中で分かち合われることを学びました。
 
今回カンボジアの人々に私がしてあげられたことは物的には本当に微力なものでした。しかし彼らとの交わりの中には確かに愛が存在したと思います。どの瞬間も互いに神の愛を分かち合う豊かな時であったと思うことができるのです。新しい人と出会い、交わることが愛の分かち合いにつながること、これはこのカンボジアワークキャンプで得た確かで大きな学びであると感じています。
 
カンボジアにいる人々のような隣人に、今私のような学生ができることは本当に僅かなものです。しかし、愛を届けることは自分にもできることを学びました。人と交わることで生まれる希望があることを知りました。この学びを心に留めて大学での学びに励み、いつか 自分に新たな力が与えられたときには人と人の、平和で豊かな交わりを支える人となりた いと思います。

最後になりましたが、私のような学生がこのような貴重な体験をできたのは、JELAの 関係者や協力者の方々、10日間共に過ごしたキャンパーのおかげだと感じています。今 はただ、関わってくださったすべての方々に、そしてJELAのカンボジアワークキャンプ に導いてくださった神様に感謝の気持ちでいっぱいです。