今回はその2回目です。
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関西学院大学商学部のキリスト教学の授業は250名ほど入る大きな階段教室で行われました。
11世紀フランスのクリュニー修道院で行われていた音楽による看取りの紹介から始まるスライドに、昔の外国の話か、というような気持で聞いておられたかもしれない皆さんでしたが、「その国の良さを図る唯一の尺度は、皆さんなら何だと思われますか? 生活の豊かさでしょうか? GNPでしょうか? あるいは軍事力?」というキャロル先生の問いかけに、学生たちのアンテナは鋭く反応したようです。
「その国の良さを図る唯一の尺度は、最も貧しい人が終末期にどのようなケアを受けるかである」というのが、15世紀のホスピス「神の宿」創設者の二コラ・ロランの言葉でした。商学部で学ぶ皆さんにとって授業中で最もインパクトの強い言葉だったかもしれません。
講義後に読ませていただいた感想文の中で、この言葉に多くの方が言及していました。また「患者さんの呼吸に合わせて音楽を奏でる。患者さん本人が指揮者」というパストラル・ハープの奉仕の在り方についても、「息を合わせるということは、他者を尊重するやり方として理にかなっていると思った」「息という言葉は同時にスピリットを意味することから、文字通りのスピリチュアル・ケアだというのも、なるほどと思った」というように、パストラル・ハープの特徴や本質的な事柄に対しても、柔らかな感性で素直に理解してくださっていることがわかり嬉しく感じました。
ベッドサイドで実際に奏でている音楽を紹介するときには、「目を閉じて、自分が患者さんのようにベッドに横になっていると思いながら聴いてみてください。眠たくなったらどうぞ、眠ってもいいですよ。それが私たちの働きのひとつでもありますから」と案内して、西洋のララバイ、テゼの歌、グレゴリオ聖歌の三つのジャンルから歌いました。
演奏後に、「心が落ち着いた」「ずっと聴いていたい。本当に一瞬、意識が飛びそうになったが、聴き終わって気持ちがすっきりした」等の感想が寄せらせました。時計で計ったらほんの10分程の時間だったかもしれませんが、普段の日常生活の中で、目を閉じて自分の最期の時を想像するのはめったにないことだと思います。このようにして音の響きを体感する間に、ある種、時空を超えた「カイロスの時間」を経験していただけたのではないかと感じました。また「最近いろいろあって考え込むことが多かったけれど、キャロル・サックさんのこのような働きを知って、自分も何か人のためにできることを見つけたい」という感想もありました。
もとの状態、もとの時間には戻れない私たちの人生。まだ知らない世界へ向かっていけるように音楽で寄り添うこと。若い人たちの人生に浮き沈みが訪れるときにも、リラ・プレカリアの音楽は何らかの役割を果たすことができるのかもしれません。ほんの短い間、音楽とともに旅した自分の心の時間が、これからの人生に何かをもたらすきっかけになるかもしれない、と感じさせられました。
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・同行記① → 関西学院大学チャペル・アワーにて
・同行記② → 関西学院大学商学部キリスト教学クラスにて
・同行記③ → 関西学院大学人間福祉学部のゼミにて
・同行記④ → 神戸ユニオン教会の婦人会にて
・同行記⑤ → 神戸イエス団教団(賀川記念館)にて
・同行記⑥ → 同志社大学チャペルコンサートにて
※リラ・プレカリア(祈りのたて琴)研修講座とは、ハープと歌の祈りを届ける奉仕者を養成する講座です。
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