会場で講演するLWF事務総長マーティン・ユンゲ氏 |
世界のルーテル教会のネットワーク組織であるLWFは、宗教改革500周年という節目に備えて様々なプログラムを展開しています。そのうちの一つが「Global Young Reformers Network」と呼ばれるもので、加盟教会の青年代表者どうしのネットワークを構築し、2017年に向けて若者主体のプロジェクトを推進していくことを目的としています。今回のヴィッテンベルクでの会議は、このプログラムにおいて最も重要なイベントで、かつネットワークのメンバーと対面で直接交流できる数少ない機会でした。
ワークショップの一こま |
会議では、講演、パネルディスカッション、グループディスカッション、ワークショップを通じて、神学、政治、エキュメニズム(キリスト教の教派一致運動、超教派主義)など多岐に渡るテーマについての学びを深め、活発な意見交換を行いました。様々な文化的・政治的バックグラウンドを持つ人々が混在する環境で、普段は得られないような刺激的な議論になりました。
特に印象的だったのは難民問題についてのワークショップでした。
LWFは従来から難民支援に取り組んでいますが、会議が開始したころはちょうど、欧州における難民の大規模な流入が顕在化し、またトルコの海岸で死亡していた難民の男児の衝撃的な写真がメディアに登場した時期だったので、当会議でも難民問題はホットなテーマとして取り上げられました。
ワークショップの冒頭では、参加者が難民の家族になりきって、「あなたがたは南スーダンに住む家族です。近くで紛争が勃発しました。あと3分で自宅から避難しなければいけません。持ち物は5個しか持って行けません。あなたなら何を持っていくか?」という状況設定の下、「最も必要そうなもの」を大慌てで鞄に詰めていく、というシミュレーションを行いました。
クッキー、飲用水、学位証明書など、多数のアイテムが用意され、その中から鞄に詰めるものを3分で相談して選ばなければいけません。「食糧と救急箱が最優先だ」「学位証明書が持って行かないと仕事に就けない」など、色々な声が飛び交いました。下川は、「7歳の女の子」という役を与えられたので、ぬいぐるみを持ち出すように訴えました(実際に難民の子どもにとっては、住み慣れた場所からの避難という過酷な状況において、おもちゃを持っていることが大きな心の支えになる、という説明もありました)。人生を大きく揺るがすような状況で、咄嗟にこのような判断を強いられることの残酷さを体感できるシミュレーションでした。
日本にも、辛酸を嘗め、やっとの思いで逃れてきた難民の方が多くいらっしゃいます。こういった方々は、母国での苦しみから解放されて、安心・安全に生活できることを夢見て日本にやってきたわけですが、そのニーズに対して十分な対応がなされているとは到底言えません。JELAの難民支援に関わる者として、微力でも新天地での生活の改善に寄与していきたい、という思いが、このワークショップによって新たにされました。
今回の会議は、全世界的な視点から教会を考え、また教会の立場から世界の諸課題について考える、という非常に有意義な機会で、JELA職員として事業を進めていく上でも参考になる学びが多くありました。
ヴィッテンベルク市役所前のマルティン・ルター像 |