2018/07/24

【信仰書あれこれ(こぼれ話)】読売・吉野作造賞贈賞式に参加

7月17日の夕方、東京・大手町のパレス・ホテルで今年度の読売・吉野作造賞の贈賞式が行われました。教育界やキリスト教界、そして主催者である読売新聞社・中央公論新社の関係者など、250人ほどが参加したようです。JELA事務局長の私(森川博己)もその中におりました。

受賞作は『プロテスタンティズム』(深井智朗著、中公新書)。受賞報道の何か月も前の2月に深井氏(東洋英和女学院院長)の著書『伝道』『信仰のメロディー』をこの欄でとりあげました。私が招待されたのは、このことと無関係ではありません。後者の冊子『信仰のメロディー』(認定こども園・母の会編集)は、深井氏ご自身から存在を教えていただき、頂戴したものです。

以下に、式の様子をご紹介します。

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声をかける相手がいないかと会場を見渡したものの、知っている顔はナベツネ(=渡邉恒雄。ミスター読売新聞?)、山内昌之(東京大学名誉教授)、北岡伸一(JICA理事長)ぐらいでした。キリスト教界から80人は来ておられたそうです。全体の三分の一です。自分が自分の業界に知り合いがいないことを思い知らされた一夜でした。

主催者挨拶と賞の贈呈に続いて選評を担当した猪木武徳氏(選考委員会座長)によると、意見が割れるのが通常なのに、今年はすんなり全員一致で『プロテスタンティズム』に決まったということです。受賞作の抜群の充実ぶりがわかります。

深井氏によると、JR名古屋駅付近の書店でしばらく売れ行きナンバーワンを示したとのこと。何年か前まで教鞭を執っていた金城学院の女学生が示し合わせて買ってくれたからだそうです。学生に人気の高い先生だったことが想像されます。

深井氏の受賞の挨拶は5分と、喉の渇きを覚えた来場者が待ち望む乾杯の前にふさわしい長さでしたが、ルターの書簡と卓上語録から二つの話をユーモラスに織り交ぜ、会場を沸かせました。どちらも有名な一節だそうで、一つは、世の栄光を喜ぶ(あるいは、自分の栄光を求める)者は地獄に落ちる、という言葉です。賞を受けるかと電話で聞かれた深井氏の頭を上記の言葉がよぎり、返事をするのに幾分ためらいを覚えられたそうです。

深井氏から後日メールで教えていただいたもう一つの言葉は、ルターが若い牧師たちに、説教を終えてうまくいかなかったとふさいでいないで、すべて神に委ね、あとは霊の働きにまかせて、あなたは一杯のビールを飲みなさいと勧めている箇所です。この話をスピーチの終わり近く、パーティに移る直前にされるとあちこちから笑いがもれ、会場は一気に和やかな雰囲気に包まれました。

ちなみに、賞を受けるか否かを尋ねる主催者からの電話は5月10日にあったらしく、私はその二日前に六本木の東洋英和女学院本部を訪れ、院長室で初対面の深井氏とたわいのない話を1時間近くもしておりました。訪問日が上記電話の数か月後だったら、贈賞式にも呼ばれず、パーティでおいしい料理も味わえなかったでしょう。出会いの不思議とタイミングの重要性を考えてしまいます。

以上、読売・吉野作造賞贈賞式の潜入記でした。大佛次郎賞に類する賞であり、参加できて嬉しかったです。これからはまた、真面目に「信仰書あれこれ」で書物の紹介をしてまいります。別の出会いがあるかもしれません。

JELA事務局長
森川 博己

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