2018/07/10

【信仰書あれこれ】クリスマスの意味を考える絵本

『クリスマス・イブにきた おとこのこ』(文=やなぎや けいこ、絵=田口智子、1992年、ドン・ボスコ社)をとりあげます。暑い毎日なので、雪のちらつく絵本を読みかえした次第です。

本書は、二人の日本人による作品ですが、舞台設定は外国のどこかで、主人公の女性の名はリーナといいます。

以下に、本書の概要をご紹介します。お読みなればわかるように、トルストイの『くつやのまるちん』や人情噺の名作「文七元結」(ぶんしちもっとい)を連想させます。

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  • リーナ(小学校中学年か高学年ぐらいの少女)はお母さんと二人暮らし。家計を助けるためにパン屋でアルバイトをしています。店をきりもりするのは、気のいい老人夫婦で、クリスマス・イブにリーナにプレゼントをくれます。お金を少しと(お母さんの大好きな)ケーキです。
  • リーナは、もらったお金で欲しかった本を買おうと、うきうきと家路に向かいます。
  • ところが、途中で少女と老婆に出くわし、もらったプレゼントを二つとも、彼女たちのために使ってしまいます。
  • 家に帰ったリーナがお母さんの帰りを待っているとき、玄関の戸口に見知らぬ少年が現れ、彼女にお礼を言います。この小さな男の子の両の手のひらの真ん中には、何か太いもので刺したような傷跡があり、血がにじんでいます。
  • リーナが家に入り、薬箱を手に玄関にもどると、男の子の姿はありませんでした。ちょうど帰って来たお母さんも、その子には会わなかったと言います。
  • リーナから今日の話を聞きながら、お母さんは壁にかけられた十字架上のイエスの両手の釘を見つめるのでした。


以上の展開が、洗練されたことばと温かい絵で表現されます。やなぎやけいこさん(文)は、『はるかなる黄金帝国』(旺文社)産経児童出版文化賞 を受賞されています。マザー・テレサや、「アリの町のマリア」として有名な北原玲子に関する児童書も書いておられるようです。

田口智子さん(絵)は、一般児童書でたくさんの作品を発表されているようですが、本書がデビュー作かもしれません。丹念に描かれた人物や風景が魅力的です。

本書の内容は、昨年の12月8日にこのニュースブログに記した私のクリスマスメッセージとも関係するので、併せてお読みいただけると幸いです。

JELA事務局長
森川 博己

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