2019/02/01

【信仰書あれこれ】福音をストレートに語る力強さ

竹森満佐一著『講解説教・ガラテヤの信徒への手紙(竹森満佐一選集)』(1991年、新教出版社)をとりあげます。

著者は、日本キリスト教団吉祥寺教会を50年にわたり牧会しつつ、東京神学大学学長やドイツのハイデルベルク大学客員教授などを務められました。その説教がいかに素晴らしかったか、本書を読めばわかります。

以下で著者の福音理解の真髄を少しご紹介します。

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救われた者の生活
  • 自由になるように、ということで神の救いにあずかったのでありますが、自由は、自分勝手なことをして、肉の力に支配されることではないのです。それは、実際には、愛によって互いに仕える生活です。……このような生活はもちろん、教会の中においてまず行われるべきものであります。互いに重荷を負う生活であります。それによって、まことの教会生活が充実したものになるのであります。それはただ、主イエス・キリストの十字架のみを誇りとする生活であります。(15頁)

福音を語れるための条件
  • 信仰者にはみな、福音を語る責任があります。それが、伝道するということであります。……この福音によって救われたと確信しているからであります。そうでなければ、福音を福音として語ることはできません。自分が今生かされているのは、この福音によることを信じていることが、絶対に必要なのであります。そうでなければ、福音を福音として語ろうという気になれないのです。(18頁)

自分が救われたときに福音の真理性が理解できる
  • キリストの復活は、神がキリストによって罪と死に勝たれた、ということであります。そのことによって我々は、神がキリストの父であり、また、我々の父であることを信じることができるようになったのです。それは、自然や我々の周囲を見まわして、神は父であるらしいと考えるようになることとは、全く違うのです。そうではなくて、キリストの十字架と復活ということによって、自分が救われることによって、キリストを復活させられた神こそまことの父である、と信じるようになることです。それは、そういう考え方ではなくて、自分の救いという事実によって知るようになった真理なのであります。(20~21頁)

自分が罪人であることは神によらなければ分からない
  • 自分の罪を認めることは、こういう欠点があるとか、弱さがある、ということではありません。……そうではなくて、自分は罪人であることを知ることです。自分は全く神に背いていることを知ることであります。……救われねばならないほどの罪人であることが分からない人には、キリストが何をしても無駄であります。……罪のことも、キリストを通して神から示されなければ、本当には分からない……。(36~37頁)

福音はキリストとの生きた関係もたらす
  • キリストの福音というのは、ただ、キリストによって与えられた福音ということだけではなく、キリストが働く福音である、ということであります。福音はただの教えではありません。福音は紙に書かれたもの、聖書に書いてあるものではありません。……福音を信じて生きるのは、キリストが今一緒にいてくださって、働いておられることを信じることであります。ただの教えや信じることの内容ではなく、これを信じる者は、キリストが共に働いてくださるという、キリストとの生きた関係を持つことなのであります。(52~53頁)

神の恵みは奇跡そのもの
  • 人間には、神の恵みぐらい分からないものはありません。……恐らく一番大事なことは、神の恵みが奇跡であることが分かっていないからであります。……神の恵みが行ったこと、パウロのような律法にしがみついていたパリサイに、十字架の信仰を受け入れさせたということこそ、まさに奇跡的事件ではありませんか。……そのことは、パウロの場合というように、他人事のように言うのは間違いであります。……自分のような者がこうして救われた事実を考えると、それはまさに奇跡ではありませんか。十字架による信仰が生まれるたびに、我々は、そこに、神の奇跡を見る思いがします。それが神の恵みなのです。(93頁)

信仰生活の目的
  • 教会の中では、みんなと楽しくすることだけが大切なのでしょうか。そうではありません。本当は信仰生活は孤独なものであります。最後には、神と自分だけの生活であります。……教会生活のゆえに一層よく祈れるようになるということは、誰でも望むことです。しかしそれは、神と自分だけの生活をさらに確かにすることではないでしょうか。もしそうでなかったら、共に信仰生活をすることには、意味がありません。(105頁)

本書では、ガラテヤ書の前半の半分ぐらいが20回に分けて語られています。途中で著者が召天したため未完なのが残念ですが、いずれの説教も大変充実したものです。

JELA理事
森川博己

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