なぜ、ブラジルの貧しい子どもたちに音楽教育が必要なのか、徳弘浩隆宣教師から以下にご説明していただきます。
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「ブラジルの貧しい地域の子どもたちに音楽を教えて、何になる? もっといろいろやることがあるんじゃない?」とお思いになるかもしれません。しかし私は、そこにブラジル社会が抱える大きな問題の解決への一つの糸口があると、確信しています。
私たち日系パロキア(サンパウロ教会とDiadema集会所の日系共同体)は、日本人や日系人への伝道や奉仕をしていますが、ブラジルは多くの可能性とともに、問題も抱えた国です。人種差別は少ないとい言われていますが、貧富の格差が激しいです。貧しい地域の人たちは、その日暮らしのため将来への展望はなく、生活改善の機運は育ちません。教育や学歴がないと就職機会も少なく、たとえ就職できても大きな給与格差が待っています。政府の手厚い補助金で生活はよくなりましたが、もらうことに慣れてしまった結果、学んだり、計画を立てたり、将来へ投資をしたり、自力で道を切り開くことが難しくなっています。自尊心も育たず、自分勝手な生き方、非行や盗み、若くして結婚出産、そしてそこに将来の希望を育てにくい世代が育ち、それを再生産している状態です。
半日しか教えない公立学校では学級崩壊状態が多く、大人でも正確な読み書きができない人が多いのです。また、公立学校では音楽教育はなされず、それはお金持ちの子どもたちが私立学校や学校外教室で受けるもので、多くの人は楽譜も読めません。ブラジル特有のリズム感と大音量の音楽やサンバで一時の幸せや達成感を味わい、それが終わるとまた、現実に戻り厳しい一年を過ごすのです。
そんな地域の子どもたちに対して教会施設できちんとした音楽教育を施すことを通して、静かに人の話を聞き他人と調和できる人間に育てたいです。音楽から得る感動や達成感は、自尊心を養う大きな助けになります。「少額でも自分で授業料を払い、自分に投資すれば、将来を変えることができる」、こういう地道な生き方を音楽を道具に教えています。
Melo牧師は音楽の専門教育を受けており、教会の一般会員やその友人の伝道のためにも音楽を教え、そこから得る授業料を貧しい地域のための活動資金にしています。それだけではなかなか前に進まず、資金的にも苦しいところでしたが、このたびJELAからご支援をいただけたので、勢いよく音楽教育プロジェクトの二年目を始めることができます。
何かを変えるのは祈りによるだけではなく、また政治や革命に頼るのでもなくて、身の回りの愛する人への忍耐強い関わりからも生まれていくことを、音楽教育プロジェクトによって実践していきたいと思います。応援やお祈りを今後ともよろしくお願いします。
貧しい地域の子供たちが、自信をもってリコーダーを吹いたり、顔を赤らめて緊張しながらも喜んで合唱する姿を、一緒に応援していきましょう。
サンパウロ教会牧師・徳弘浩隆
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