2017/09/04

【リラ・プレカリア/難民支援】公開講座受講者からの便り

JELAはリラ・プレカリア(祈りのたて琴)の授業の一部である、外部専門家を招いたいくつかの講義を公開講座にしています。

6月29日の講義「スピリチュアルペインとそのケア ― 理論と実践」(講師=山崎章郎・緩和ケア充実診療所ケアタウン小平クリニック院長)を聴講されたお一人の方が、難民支援というご自身の仕事との関係で感想を送ってくださいましたので、ご紹介します。

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昨年日本で難民に認定された人のうち、その判断が出るまで一番長く待った人は、2,501日待たなければならなかった。7年近くを難民認定申請者という不安定な立場で異国で過ごすことは、その人の人生にとってどういうものであろうか。

不認定処分を繰り返し受け、何度も新たに申請を行った末に認定される場合もある。長期戦になる人の中には日本での在留資格がない方も多いが、在留資格がないと働きたくても働けない。そういう立場に置かれると、恵みを乞うために生きているわけではなくても、それをせざるを得ない。

本国の家族とは別れたまま。難民ゆえに、自分のことを打ち明けようとする相手が本当に信頼できるか(その者を通して自分の存在が、知られたくない者たちに伝わってしまわないか)、不安も大きい。ネガティブな状況はいくらでも出てくる。それでも、自力で生き抜いている人も少なくない。来日後、友人、知人、宗教者、支援団体などとの出会いで、生き抜いていることもある。

そのような出会いは、山崎先生が語られたスピリチュアルペインを軽減することにつながると思った。スピリチュアルペインは広義には、その人がその状況における自己と他者の関係性のありようが肯定できない状態からくる苦痛である、とのお話があった。難民認定申請者のほとんどがこのスピリチュアルペインを持っていると言える。

問題の根源を解決できなくても、その痛みを軽減させることはできる。問題を解決できなくても、難民認定申請者である間にどれだけスピリチュアルペインを減らすことができるか、その手立てを持てているかということが、難民認定申請者としての長い時間を乗り切る大切な点であるということだ。

今までなんとなく思っていたことを、先生の話を聞いているうちに余計なものがそぎ落とされて、すっきりわかった気分になった。難民の方に接することで、山崎先生のいう「他者」として存在したり、「他者」との出会いのきっかけを、支援者としての自分が作れるということだ。

極限に追いつめられている人が「他者」に出会えるということが、支援者にとっても大きな感謝になる。支援する・される関係であることに違いはないが、その中に小さいながらもプラスの円環が生まれていることも確かだ。クリスチャンで難民認定申請を長年繰り返す方がこうおっしゃったことがある。「自分が認定されないことはとても残念。でも、今の人生は自分にとって必要だから与えられたと思っている。投げやりで思っているわけでない。辛い人生も愛になるからと信じているから。そして、この人生だからこそ出会えた人々がいるのは幸せだ」と。全ての人が彼のように思うわけではないし、スピリチュアルペインが軽減されない状況の人もいる。それでもあきらめないことが大切だ。どこかで「他者」と出会い、その先には、プラスの円環を生むと思えるから、と今回の講義を聞いて心から思った。

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リラ・プレカリア(祈りのたて琴)研修講座とは、ハープと歌の祈りを届ける奉仕者を養成する講座です。

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