2018/05/28

【信仰書あれこれ】キリスト教霊性の現代の名著

2000年4月に、当時のJELA事務局長(米国人宣教師)が英語のキリスト教書を一冊くれました。”Celebration of Discipline –The Path to Spiritual Growth” written by Richard J. Fosterです。初めて目にする著者名でした。初版の発行は1978年です.

この欄で紹介した『牧会者の神学』の著者ユージン・ピーター
ソンの推薦文が裏表紙にあります。「雨の日に子どもが屋根裏部屋を探し回って、宝物をたくさん見つけ、きょうだいに知らせるように、リチャード・フォスター は、現代では忘れ去られてしまった霊的訓練の数々を発見し、興奮しながら私たちに教えてくれます。それらは、彼が説くように、喜びを得るための道具であり、成熟したキリスト信徒としての霊性と豊かないのちへの道程となるものです。(森川訳)

6年後にようやく日本語訳が出ました。『スピリチュアリティ 成長への道』(リチャード・J・フォスター著、中島修平訳、2006年、日本キリスト教団出版局)です。

概要については、黒木安信氏が『本のひろば』2006年12月号に寄せた書評がわかりやすいので、右からご覧ください。→ 黒木氏の書評

以下から本書のエッセンスを感じ取っていただければ幸いです。

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  • 自分の意志や決意の力で人格の内面を変革しよう、ということに絶望したなら、素晴らしい悟りへの扉を開いたことになる。すなわち、われわれの内面の義、正しさは、神からの贈り物であって、神の恵みによって受け取れるものだ、という洞察である。……内面の仕事は、ただ神のみが内側から働くことができるのである。(18頁)
  • この息をのむような教えを把握した瞬間に、われわれはすぐさま逆方向に向かうという誤りを犯す危険性に直面する。われわれができることは何もない、と信じてしまう誘惑である。……ただ待つのみ、というのは誤った結論である。……神の恵みを受け取る一つの手段として、神はわれわれに霊的生活のための訓練をくださっているのである。この訓練によってわれわれは真っ直ぐに神の前に自分を置くことができるようになり、神はわれわれを聖化し変貌させてくださるのである。(19頁)
  • 使徒パウロは言った。「自分の肉のために撒く者は、肉から滅びを刈り取り、御霊のために撒く者は、御霊から永遠のいのちを刈り取るのです」(ガラテヤ6:8、新改訳聖書)と。農場経営者が穀物を成長させようとしても不可能である。穀物の成長のための正しい環境をつくることができるのみである。……霊的訓練も同じことである。霊的訓練とは「御霊に撒く」ことなのである。……霊的訓練がわれわれを、神が働いてわれわれを変貌させることができる場所に置くのである。(19頁)
  • 注意すべきことは、これら祝福された霊的訓練を、魂を殺してしまう律法の一つに変えてしまうことも可能だということである。……霊的訓練を熱心に求めるあまり、それらの訓練を主イエスの時代、律法学者やファリサイ派が陥っていた外面の義に変えてしまうのは、容易なのである。……人格の内的な聖化や変貌は神の業であってわれわれの為し得ることではないと純粋に信じるなら、他者を支配する願望は消えるであろう。(21~22頁)
訳者はフラー神学大学院における著者の後輩です。著者と面識があり、著者の人柄を「神に触れられ、神に触れている人」(268頁)と記しています。

本書はキリスト教霊性の名著としてミリオンセラーを記録していますが、翻訳もドイツ、フランス、スペイン、デンマーク、ポルトガル、アフリカンズ、ロシア、韓国、中国を含む15か国でなされているとのことです。

リチャード・フォスターには有益な書籍が多数あるのですが、和訳されているのは本書だけです。不思議です。

JELA事務局長
森川 博己

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