2018/10/04

【信仰書あれこれ】キリストの建設

沢田和夫著『キリストの建設』(1967年、中央出版社)をとりあげます。

2018年3月16日のこの欄で、その時点でキリスト教信仰書を一冊だけ手もとに残せるなら、宮本武之助著『聖書のことば』(1977年、潮文社)を選ぶ、と書きました。今、同じことを自らに問うなら、この沢田氏の本にします。

以下に内容の一部をご紹介します。

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聖書を読む心がまえ
  • お勧めしたいことは、一通の手紙を受け取ったつもりで聖書を読んでくださいということ。(中略)キリストから自分宛てに手紙が来たのだ、そしてこれにどう答えたらいいのかと考える、そういう態度で読むことをお勧めしたいし、私もそうしたいと思っています。……聖書研究という言葉は気を付けて使いたいと思います。まさか大事な人からもらった手紙をとりあげて手紙研究などと、そんなことはしませんから。(3~5頁)
  • わからない問題を出し合う読み方はなさらないように。……わかったように思うところを出し合ってください。ここがよかった。自分にはここがひらめいた。ここをこういうふうに受け取ったと、出し合って読むと、全員がなるほどなるほどと、自分のわからないところを他の人がわかっていてくれたという喜びを持つことができるし、一緒にますますわかっていくことができます。(15頁)
  • 聖書という書物にこう書いてある、それを暗記しました、キリスト教ではこういうことになっております。そんなことを互いに言っているようでは力にならない。実在するキリストからの呼びかけとして聖書を受け取り、それを自分なりに腹の中に詰め込んで、それが自分の血となり肉となった時に、神の言葉が自分の血液の中をグルグルと走り回るようになって新しい人種になれるのです。こういう受け取り方をしないと、聖書が六法全書のようになってしまい、法律を適用するような仕方で人に押し付けられ教えられたりすることになりますが、聖書はそのようなものではなくて「生命の言葉」、つまり「生まれ変わって生きるための言葉」、この覚悟を新たにしたいと思います。(21頁)

サマリアの女と湧き出る泉の話(ヨハネ4章5~42節)
  • キリストさまが、今日もおっしゃりたいことは何でしょうか。やはりこの生命の水の話です。キリストさまから水をいただいて、そして自分の中でこんこんと湧き出る泉ができるようにならなくては、と思います。もしもキリスト信者と称しながら、自分の中にこんこんと湧き出る泉を持っていないとすれば、どこかまだ調子が狂っているわけです。このヨハネ4章の恵みが分かっていないわけです。ただ教理を頭で習うだけではいけません。自分の中にこの泉を持っていなければならない。たまには泉が枯れることもあるでしょう。けれどもそれは一時のことで、また心の中にこんこんと湧き出る泉ができるはずなのです。それが「福音」です。そこから証しの使徒としての働きが可能となります。(28頁)
  • 「羨ましい。このサマリア人の女の目の前にキリストさまが現れて、(お前が言うメシアというのは)お前と今話している“わたしだ”と言ってくださるとは、羨ましい」。それは聖書の読み方を勘違いしているから、そんなに羨ましいと思うのです。二千年前の古文書と思っているから、羨ましいと思うのです。復活のキリストさまの信仰を持っていれば、何が羨ましいのでしょう。今日私どもに聖書を読ませているキリストがおられるのに私どもが「ああ、そのキリスとやら……」と言いますと、「お前と話しているのは書物ではない、……お前に呼びかけているのは私だ」とおっしゃる。素晴らしいことに「私だよ」とおっしゃるのです。(29~30頁)
  • この(サマリアの)婦人はキリストさまの教えを胸いっぱいに、体いっぱいに受けて、町へ飛んで行きました。「この人こそ救い主ではあるまいか」。どうして今日のキリスト者は、もっと自ら見出した救い主のことを多くの人に伝えられないでいるのでしょうか。十分に救い主を見つけていないからに違いありません。……教会の組織も教義も、それぞれにみんな重要で、軽んじようとは思いませんが、救っていただくのはキリストだけであって、本当を言えば他の何もあてにはならないのです。あてになるのはキリストのみ、教会の頼るべきはキリストのみ、その信仰に到達して、「お前を救うのは私だよ。私だけだよ」と言っていただきたい。そうして初めて、どこへ飛んで行っても救い主を伝えることができることでしょう。(31~32頁)

すべてこの調子です。使徒伝承教会一致のような話題についても、カトリックの立場をことさらに強調するのではなく事柄の本質、つまりキリストを中核に置かねばならないという視点から、情熱的に議論を展開します。

いつ読んでも、頭と心をキリストで満たしてくれる本です。

JELA事務局長
森川 博己

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