2018/10/09

【信仰書あれこれ】真にエキュメニカルなロマ書理解

ラニエロ・カンタラメッサ著『キリストにおける生活――ローマの信徒への手紙の霊的メッセージ』(2004年、サンパウロ)をとりあげます。


今回は序文によって、この本がいかに内容豊かなものであるかを語ってもらいます。

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神学的論争ではなく信仰形成とその強化が目的
  • 本書は、……使徒(パウロ)がこの手紙をしたためたときに、彼に霊感を与えた目的にまっすぐに達しようとする一つの試みです。彼の目的は、確かにローマのキリスト者に――そして後代のキリスト者に――……霊的な賜物を伝え、そうすることで彼らが共通の信仰によって強められ、互いに励まされることでした<ロマ1:11以下参照>。幾世紀もの歳月の流れの中で、ロマ書は、たびたび神学的論争や対立の優先領域となりました。ところが実際は、この手紙は学者という狭い範囲の人々のためではなく、大部分が単純で無学な人々から成り立つ、「ローマにおける聖とされ、神に愛されている」すべての人のために書かれたもので、その目的は信仰を築き上げることでした。(7頁)

古い人から新しい人への動的な導き
  • ロマ書は新しい福音宣教を考えるための理想的な道具であり、宣教、黙想、霊操コースなどのための最高の青写真です。……この手紙は、一連の啓示された真理を重要なものとして次から次へと静的に提示するだけでなく、一つの歩みを概説します。つまり、罪と死の古い実存からキリストにおける新しい被造物になることへ、「自分自身のために」生きることから「主のために」生きることへ[の歩みを]<ロマ14:7以下参照>。この歩みの中に、[罪と死から永遠の命へ]過ぎ越していく動きと躍動があります。(7~8頁)

エキュメニカルなロマ書理解をもとにした生きた信仰体験と実践
  • 私は、カトリック、オーソドックス、プロテスタントという三つの主要なキリスト教伝統の各々に現存する洞察と富をできるだけ利用しようと努めました。その際、キリストを信じるすべての人によって共通に分かち合われていない点や、少なくとも大多数のキリスト者によって分かち合われていない点を可能な限り避けようとしました。……1999年10月にカトリック教会と世界ルーテル連盟との間で達成された、信仰による無償の義化についての原則的な合意は、ロマ書のこの全キリスト教会的(エキュメニカル)な読み方を、より一層緊急で必要なものとしています。合意文書の中で、この原則的な合意は、今や神学的討論から実行へ移るように、そしてそうすることによって、共通の教義がすべての信じる人の生きた体験となるようにという願いを表明しています。(11頁)

本欄2018年8月14日で紹介したように、本書の著者は数年前まではバチカン教皇庁の説教師を長年務めていました。

訳者(庄司篤神父)によると、本書の和訳を依頼された際に著者から「私の一番好きな著書を日本語に訳してみますか」と言われたそうです。

JELA事務局長
森川 博己

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