著者は2000年9月3日から2017年12月16日まで、カトリック東京大司教を務めました。東京外大ロシア語科を中途退学して東大法学部に入りなおし、一般企業でしばらく働いた後、カトリック司祭を目指して退職。神学生として上智大学で哲学、神学を修め、ローマのグレゴリアン大学で神学博士号を取得しています。
本書はおもに、2011年3月の東日本大震災の前後の数年間に語られた説教をとりあげ、それらを、四つのテーマ「望み、慈しみ、幸せ、つながり」で分類しまとめたものです。それぞれの話は5ページ前後と短く読みやすいのですが、内容的には深いものがあります。以下に概要と中身の一部をご紹介します。
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前書き・後書き部分から読み取れる著者の信仰姿勢や本書を著した意図は、次のようなものです。
・ 宗教者の使命は、困難な中に生きる理由を示し、勇気と希望を示して、苦しみ悲しむ人々と共に歩み、人々への救いの道を示していくこと。
・ 信者にとっては何よりも、イエス・キリストご自身が最高の信仰の模範。
・ これまで自分が感じてきた信仰の喜びを読者と分かち合い、本書が新しい希望を与える端緒となってほしい。
・ 毎回ミサで説教するたびに、「信仰を確かめ、信仰を深め、信仰を伝える」という信者の務めに、いくらかなりとも役に立ちたいと願いながら説教を行ってきた。
最後の「カトリック教会」は、著者がルーテル教会その他のプロテスタント教会の方であれば、別の言葉が入るでしょうし、要するに著者が言いたいのは、人々にイエス・キリストにある希望と励ましを与えることこそ、キリスト教会の使命だということだと思います。
本書110頁に次のような記述があります。
「……イエスの生き方に倣うようにわたしたちも召されています。わたしたちも日々小さな死(犠牲)をささげることにより、イエスの復活とその王国にあずかることができると思います。『わたしの後に従いたい者は、自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい』(マルコ8:34)とある通りです。」
つづけて著者は、死から命(=復活)への神秘を表している良い祈りとして、マザー・テレサの次の祈りを紹介します。
「イエスよ、わたしを解放してください。/愛されたいという思いから、評価されたいという思いから。/重んじられたいという思いから、ほめられたいという思いから。/好まれたいという思いから、相談されたいという思いから。/認められたいという思いから、有名になりたいという思いから。/侮辱されることへの恐れから、見下されることへの恐れから。/非難される苦しみへの恐れから、中傷されることへの恐れから。/忘れられることへの恐れから、誤解されることへの恐れから。/からかわれることへの恐れから、疑われることへの恐れから。/アーメン。(岡田武夫・訳)」(本書110-111頁)
読み終わった後に、キリストにある喜びと力を感じる一冊です。
JELA事務局長
森川 博己
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日本福音ルーテル社団(JELA)ウェブサイト
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