2018/01/24

【信仰書あれこれ】誰かにプレゼントしたくなる本

 クリスチャンに贈りたい本と、ノンクリスチャンに贈りたい本がありますが、これから紹介する『信じる力 ― 大切なあなたに贈ることば』(岡田武夫著、2013年、オリエンス宗教研究所)は、そのどちらにも当てはまる本のような気がします。

著者は2000年9月3日から2017年12月16日まで、カトリック東京大司教を務めました。東京外大ロシア語科を中途退学して東大法学部に入りなおし、一般企業でしばらく働いた後、カトリック司祭を目指して退職。神学生として上智大学で哲学、神学を修め、ローマのグレゴリアン大学で神学博士号を取得しています。

本書はおもに、2011年3月の東日本大震災の前後の数年間に語られた説教をとりあげ、それらを、四つのテーマ「望み、慈しみ、幸せ、つながり」で分類しまとめたものです。それぞれの話は5ページ前後と短く読みやすいのですが、内容的には深いものがあります。以下に概要と中身の一部をご紹介します。

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前書き・後書き部分から読み取れる著者の信仰姿勢や本書を著した意図は、次のようなものです。
宗教者の使命は、困難な中に生きる理由を示し、勇気と希望を示して、苦しみ悲しむ人々と共に歩み、人々への救いの道を示していくこと。
信者にとっては何よりも、イエス・キリストご自身が最高の信仰の模範。
これまで自分が感じてきた信仰の喜びを読者と分かち合い、本書が新しい希望を与える端緒となってほしい。
毎回ミサで説教するたびに、「信仰を確かめ、信仰を深め、信仰を伝える」という信者の務めに、いくらかなりとも役に立ちたいと願いながら説教を行ってきた。
困難と混迷を極める現代世界において、カトリック教会が人々のために希望と励ましのしるしとなることができるように。

最後の「カトリック教会」は、著者がルーテル教会その他のプロテスタント教会の方であれば、別の言葉が入るでしょうし、要するに著者が言いたいのは、人々にイエス・キリストにある希望と励ましを与えることこそ、キリスト教会の使命だということだと思います。

本書110頁に次のような記述があります。
「……イエスの生き方に倣うようにわたしたちも召されています。わたしたちも日々小さな死(犠牲)をささげることにより、イエスの復活とその王国にあずかることができると思います。『わたしの後に従いたい者は、自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい』(マルコ8:34)とある通りです。」

つづけて著者は、死から命(=復活)への神秘を表している良い祈りとして、マザー・テレサの次の祈りを紹介します。
「イエスよ、わたしを解放してください。/愛されたいという思いから、評価されたいという思いから。/重んじられたいという思いから、ほめられたいという思いから。/好まれたいという思いから、相談されたいという思いから。/認められたいという思いから、有名になりたいという思いから。/侮辱されることへの恐れから、見下されることへの恐れから。/非難される苦しみへの恐れから、中傷されることへの恐れから。/忘れられることへの恐れから、誤解されることへの恐れから。/からかわれることへの恐れから、疑われることへの恐れから。/アーメン。(岡田武夫・訳)」(本書110-111頁)

読み終わった後に、キリストにある喜びと力を感じる一冊です。

JELA事務局長
森川 博己

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